自分のできること:デザイナーというしごと
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こんにちは。
中堅デザイナーですが、そろそろキャリアも10年を超え、自分のやり方もなんとなくわかって、自分の得意・不得意なこともわかって、だんだんやりづらいところにきています。
ひとことでデザイナーといっても、たくさんの分野があって、やりかたがあって。
できるデザイン、できないデザイン、できるやり方、できないやり方、たくさんあります。
UIデザインとプロモーションデザイン
いまはわたしはさまざまなサービスのアプリ(ネイティブ・Web問わず)のUIデザインをすることが多いですが、そのサービスを展開するにあたり、LP必要だよね、広告必要だよね、となり、それらのデザインワーク全般を請けることも多くなってきました。
そもそもアプリのUIデザインをするとはいえ、そのサービスのこと、システムのことについて、9割がた知っておかないとなかなかジャストフィットなUIデザインは出せないのですが、それでもLPや広告などの媒体のデザインワークが必要になると、今度はプロモーションという意味での戦略を考えなければならず、ちがう脳みそを使うことになります。
でも、プロモーション戦略を考えるということは、そのサービスが狙うターゲット層、その人たちにどういう使い方をしてほしいのか、どうやって届けるのかなど、UIデザインをするときよりもユーザー像を明確にして考えることが多くなってきます。
今まではわりと「わたしはUIデザインの担当なので、プロモーション戦略のほうのデザインはだれかにおまかせしますね」ということを考えたりしていたのですが、ちゃんと責任をもってUIデザインをするためには、そういう考えはラクを追求しているだけで、ちゃんちゃらおかしいなと思うようになりました。
まあ、UIデザインもプロモーションのデザインも、実際に手を動かさなければならない、というわけではなく、重要なのは両方の話をちゃんと聞いておくこと、かなと。
デザイナーという仕事
それらをふまえなくてもいいのですが、デザイナーという仕事は、わたしは次のようなことだと考えてます。
だれかがあたまのなかに思い描いていることを形にする、具現化する
たとえば、発想豊かなおじさんが相談に来て、「日本の飲食業界にはこういう課題がある。これは、こういうサービス(またはプラットフォームとかでもよい)を立ち上げてみんなが使うようにすれば、ぜったいに飲食業界で働く人もいまよりラクになるし、お客様に満足してもらえる率が高くなるよ」というアイデアを持っていたとします。
そうしたら、それを実際に形にすることがわたしたちの仕事。
形にするにはもちろんいろんな専門知識を持った人が必要で。システム屋さんは、この課題に対してここを効率化するためのこういうシステムをつくりましょう、ていうと思う。
でもわたしたちは、デザイン目線、もっというと飲食業界にいる「人」から考える。
飲食業界で働く人たちが、今どういう課題を抱えていて、どうなると幸せなのか。これを徹底的に調べないと、何も始まらない。
目に見えるところで言うと、ロゴの制作、アプリデザイン、Webデザインなどといった制作のタスクは出てくるが、もうひとつ上の層にある「人」という視点で考えないと、何も始まらない。
その人たちの幸せを考えた結果、ああこういうシステムあったほうがいいね幸せになるね、と判断したのであれば、そのシステムつくりましょう、てなるかもしれないけど、それはどちらかというと結果論。
相談に来たおじさんは、もしかしたらあたまのなかですべてのことを計算しつくしていて、どのようなサービスが必要かがもう目に見えているかもしれない。そうすると、本来はそのサービスを形にしてくれる人だけを探しているかもしれない。
でももしそうだとしたら、わたしたちの出番はないかもしれない。
おじさんがあたまのなかに思い描いていることを形にすることには違いないが、おじさんひとりでもう答えが出ているものをつくるのであれば、正直わたしたちではなくてもだれでもできる。
とすると、わたしの考えているデザイナーは、さっきよりも、より付加価値があるものになってくる。
だれかがあたまのなかにぼんやりと思い描いていることを形にする、具現化する
そう、これがいまわたしたちがやっている仕事だ。
さっきの、「飲食業界で働く人たちがどうなると幸せなのか」。これを、おじさんといっしょに考える。必要であればいろいろな調査をして、それらの情報もあわせて、形にしていく。
こういうフローをおじさんといっしょに踏んでサービスをつくり、飲食業界で働く人たちが少しでも幸せを感じてくれたら、もう感無量である。
形にするフロー1:その場で意見を整理する
実際に形にするフローを少しだけ紹介します。少しだけだよ。
いちどめのヒアリングのときから、リアルタイムで意見を整理していきます。
これはまだパソコンを使ってデザインなどをする段階ではなく、どちらかというとおじさんの話を聞くだけです。
おじさんの話を聞きながら、ポイントをひたすらふせんに書いていって、いろいろな軸に分類して貼っていきます。
おじさんの中には、じゃっかん支離滅裂な方もいなくはなくて…(ほとんどの場合はそんな心配はないのですが!)。。。
わたしたちが内容を把握するという目的も含めて、どんどん整理していきます。
ちなみに、ここでよくわからないことは、その場でガンガン質問します。
しっかりと腰を据えて話を聞いているわたしたちがよくわからなくて質問するということは、おじさんの説明が少なからずわかりづらかったということにもなります。(おじさんをいじめているわけではなく、みんなの理解をスムーズにするという意図です)
もうひとつの方法:みんなでワークショップ形式で整理する
先ほどはおじさんひとり(またはおじさんのチーム)が一方的に説明するパターンでしたが、そうもいかない場合もあります。
それは先述した「ぼんやり」に関わってくることなのですが、チームの中でだれも具体的なイメージを描けていないときです。このときは、いくらヒアリングしてもなにも出てこないときがあって。。
そういう場合は先方のチームとこちらのチームであわせてワークショップ形式で、デザインスプリントのようなことをします。といっても、ブレインストーミング(ブレスト)に毛が生えたようなものかな。
たくさん出た意見のなかから削ぎ落としたりマージしたりして、新しい価値をつくっていく。
形にするフロー2:その場でイメージをつくる
これは、前記事(持ち帰る、ということを少しずつやめてみる | ツクロア – DESIGN LAB)をぜひ読んでください。
形にする際に気をつけていること:トレードオフ
わたしたちがいつもひとつ気をつけていることは、おじさんの企画にそこまで口を出さないが、疑問な点は議論する、ということです。
実際、おじさん(とその仲間たち)はそのサービスについて、その業界について、わたしたちよりもはるかに長い時間調査をしてきているし、なかにはその専門家の方もいらっしゃるほど。それに対してわたしたちはその業界についてはほぼシロウト。そのかわり、デザインにおいては専門家。
そこのトレードオフをちゃんとするようにしています。
わたしたちがいくらデザインの専門家だからといって、おじさんの企画にそこまで口を出せるわけではありません。
ただ、そのサービスによってほんとにそれを使う人が幸せになるのかどうか?というところは、ちゃんと納得いくまで議論します。
ここでは、「業界のシロウト」としての意見がわりと重宝される場合もあり、いい感じにトレードオフはできている気がします。
補足:ひとつ上の視界からみる
今日の話のなかで暗にほのめかされているいちばんのキーは、実は
飲食業界で働く人たちがどうなると幸せなのか
ということです。
サービスを形にする、ということがわたしたちのゴールかもしれませんが、それに必要な情報は、どんなシステムをつくるか、どんなデザインにするのか、という小さなポイントを見ていても実は見つかりません。
ひとつ上の視界にあがって、使う人たちの幸せという観点で考えられるかどうかがだいじなポイントだと考えています。
この、昼と夜の東京タワーを見てなにを思いますか?
「昼から夜になった」「昼みても夜みてもどっちもきれいだね」など、いろいろありますが、それはあくまでも自分の目線からしか見ていない答え。いや、正解とかないのでぜんぜんいいんです。
このひとつ上の視界にいくとしたら。。
「地球が自転して、今いる場所が太陽からの影になった」
かな。
相対的にものごとを捉えると、ちょっと発想変わらないかな?という願いをこめて。