イスラム文化圏〜イランを旅して〜
- TRAVEL
- 異文化理解
中東編ということで、12月のブログ4週目、担当の高橋知成です。東アジア周辺から移動を続けて、今回は中東地域に来ています。今回は中東地域のイランを旅をした体験を元に、イスラム文化圏での異文化体験について書いています。
想像の中の中東って
中東地域は、良くも悪くも、皆さんの話題に上がる地域だと思います。
- 石油
- イスラム教
- 絨毯
- 危険な場所
などなど。僕の中の中東も同じようなもので、やはり「危険な場所」という認識が常に頭の中にありました。それは、今までに見てきた映画であったり、ふと目にするニュースのタイトルから、自然と自分に構築されたのだと思います。また、旅に出てから立て続けに、テロ事件が起発生した事もあって、さらにその印象が強くなっていました。
イラン到着直後の洗礼
インドからのトランジットで立ち寄ったドバイから、飛行機で1時間弱で、イラン南部の都市、シーラーズに行く事ができます。途中の飛行機の窓からは、これまでのアジアの地域とは一変して、地肌がむき出しの独特の景色が見えていました。
早速アライバルビザを取得のために窓口へ向かいます。約50ユーロを払って、1ヶ月観光ビザを取得しました。手続きを終えて、いざ入国審査に向かおうとしたら、スタッフのおじさんから「You are japanese? Welcome to Iran!!」の言葉とともにお菓子のプレゼントを頂くというイベントが発生。これまでは、どこの国でも、スタッフは感情を出さずに、機械的に対応をしていたので、イランのスタッフの対応は、とても新鮮に感じられました。同時に、イランというイメージが変わり始めた瞬間でもありました。
そこはどことなく日本の風景
飛行機の窓から見えた景色は、日本では見ることができないような、荒涼とした風景でした。しかし、いざ陸路移動を始めると、どことなく日本を思わせるような景色が町中に広がっていることに驚かされました。それもそのはず、緯度的には日本と同じ辺りに位置しているので、植物などもん似たような種類のものが生えています。例えば、マツであったり、カエデが街路樹として植えてあります。
また、とても興味深かったのが、イランにはこたつ文化があったり、人々はベットではなく、敷布団を引いて寝るということです。日本とこんなにも離れているのに、意外なライフスタイルの共通点がありました。
ありえないほど、親切な人々
路上で地図と睨めっこを始めるとすぐに、「どうした?どこにいきたい?」と、どこからともなく現れ、「よし、ついてこい!」と案内をしてくれる人。また、「ちょっと寄ってけ!」と、言われ、お茶を出され、日本の話をしていると「お腹減っただろ?」と、ご飯をご馳走してくれる人。「イランに来たお前に、一曲プレゼントだ!」と、言って、ピアノ演奏を始める人。本当に、たくさんの人から、強烈で、ど直球なおもてなしをうけました。彼らは、たとえ英語が話せなくても、積極的に声をかけてきます。Google翻訳を使ったり、身振り手振りで、根気よくコミュニケーションを取ってくれ、行きたい場所がわかると、そのままそこまで連れて行ってくれました。おかげさまで、イランではこれまでの国と比べると、スムーズに移動を続けることができ、体力的にも時間的にも余裕のある行動ができました。
「女性専用」マーク
前回の記事では、「お坊さん」マークを紹介しました。ただ、イスラム教には、お坊さんという概念は認められていないので、存在しません。その代わりに目にするようになるのが、「女性専用」マークです。日本でも、電車の一部の車両が、時間帯限定で女性専用車両になったりしていますが、今回訪れたイスラム文化圏のドバイとイランでは、女性専用車両だけでなく、
女性専用入り口、女性専用席、女性専用チケット売り場、などが出てきます。また、これはとても厳しく、うっかり女性専用車両に駆け込んだとなると罰金が発生するほどです。
そして、イランでは、女性全てが頭に、スカーフを巻いています。これは、外国人旅行者も例外ではなく、巻いていない場合は法律で罰せられます。なので、女性を表すマークにはこのような物が使われていました。
地下鉄の女性専用車両の停止位置を表している物と、おなじみのトイレを表す物です。
ただ、厳格な国家の姿勢とは反対に、軽めに考えている人もいます。スカーフについても、賛否両論のようで、かなりラフな感じに巻いている人もいます。話をした人の中には、日本人の宗教感覚と似たような人もいて、「僕はムスリムだけれど、特に神は信じていないかな」というような事も聞く事ができました。
イラン大統領からのメッセージ
シーラーズを観光中に、あるモスクを訪れた際、現地の方にガイドをしてもらった時のことです。ガイドの終わりに、お茶のサービスがあるとのことで、事務所に案内されました。そこで、お茶とお菓子と一緒に、イラン現大統領が、イスラム教国家の代表として、旅行者向にけて書いたメッセージカードを受け取りました。内容は、「フランスで発生したテロを機に、イスラム教へ間違った認識を向けられることに危惧して、皆さんに今早急に伝えなければならない事」という前置きがあった後、「様々なメディアから情報が発信されているが、それらにはなんらかの意図が存在していることを認識してほしい。その上で、「自分で手に入れた直接的な情報(ムスリムから話を聞くや、コーランを読んでみるなど)を元に、考えてもらいたい」という内容のものでした。
他の場所でも、旅行者とムスリムスタッフが簡単にコミュニケーションをとれる仕組みが用意されていました。そこから、イスラム教視点での最近の一連のテロ事件への捉え方を知る事ができました。
実際にイランを体験してみて
イランは2週間ほど滞在しましたが、今までのどの国よりも、「宗教」を強く感じた国でした。地下鉄の駅全てに、お祈りの場所があり、定時にはアザーンが、各モスクから流れる。モスクには、毎日多くのムスリムが集まりお祈りをする。その姿勢には、すこし圧倒されるものがありました。
また、人々の優しさ、しかもそれを直接的に表現する人の多さに、驚かされました。チャイをご馳走してくれる人、わざわざバス停まで車に乗せてくれる人、暇だからと町中をガイドしてくれる人、本当にたくさんの人が良くしてくれました。
それは、イランを訪れる以前のイメージとは違ったイランでした。