デジタルファブリケーションにチャレンジ(3)-電子工作with3Dプリンタ編
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「トイレが使用中かどうかを電子工作でモニタリング」という取り組み自体はもう何年も前からあって、私の知る限りでは2014年に興梠敬典さんがEspruinoというマイコンボードをつかって当時勤めていた会社のトイレ使用状況がわかる仕組みをつくっていた、ワンフロア100名ほどの社員に個室トイレは2つで不便だったらしい。
興梠さんは「空いたら教えて」機能まで付けて、トイレが空いたら社員にブラウザで通知する仕組みをつくっていた。
それから安価なマイコンボードが普及し始め、トイレをモニターする記事が出てきたと思うけど、個人的に思ったことは「パソコンやスマホの画面を持たない人には分からない」ということ。
なんともシュール、ネットにつながるトイレモニター…
ここでつくりたいと思ったものは「モノで可視化」ということだ。
つまり、デジタルデバイスを持っていない人でも、可視化するモノが目に届く場所にあればトイレが空いているか使用中かがわかる。
なるべく簡単に気づきを与える、例えば飛行機のトイレなどで使用中のランプが付くように。
それならLEDで何かを光らせたらいいのだが、どうせ個人的に使うのならちょっとおもしろくしてみたい、と思ってトイレ便器のフタが開閉するオモチャをつくってみた。
まずは完成した動画がこちら。
Arduino Toilet monitor(ESPr Developer) from Hideki Akiba on Vimeo.
必要なものは
- Wifiモジュール(ESPr Developer)
- サーボモーター
- 電源
といったところだろうか。
電気回路の設計は私自身が全く無知であるが、この時代はモノを試しにつくることを割と許される。筐体は3Dプリンタでつくれる、ネットにつながって動く仕組みはArduinoなどがある。
今回弊社のオフィスのトイレをつかってみようと思う。
弊社にフロアを共用してくださっているサービシンクのエンジニアリーダーの井加田さんがトイレに照度センサーをつけていたので、「APIをつくって」とお願いしたところあっさりとつくってくれた。
井加田さんの記事はこちら
トイレの空き状況をチャットツールから確認できるようにしてみた。これってIoT!? – Qiita :
あるURLを叩けばtrue(使用中)かfalse(空いている)の文字列が帰ってくる。
ESPr Developerは、日本国内で技適が通ったWifiモジュール付きの小型マイコンであって、Arduinoとしても使えるので、5秒おきに井加田さんがつくってくれたAPIにアクセスするようにプログラムを書いてみる。
筐体づくり
3Dプリンタの普及でハードがつくりやすくなったという人もいるが、私はそれでも大変だと思う。
よかったら前回の記事も参考にしてほしい。
ただし、その恩恵は受けられるのでチャンスはあると思っている。やる気さえあれば数万円のプリンタを購入してみればよいと思う。
3Dプリンタを「高速プロトタイピング」だという人もいて、なんとなくわかる気がする。こういったものをもしも製品化するとなればこんなものでは済まないという。
プロダクトデザイナーは製品化するにあたって更に小型化への課題、バッテリーの熱を持ちすぎてユーザーにとって危険ではないか、量産スケジュールまでに必要な部品調達など、プロトタイプから更に先の困難な課題を解決するために常に先を読む必要があるという人もいた。
それと比べ私がつくっているものなんて個人で楽しむオモチャ、それはそれで楽しいが。
意外と使えるかも?利用シーン
そもそも、写真ではPCの前にいるので、興梠さんのように「デスクトップ通知でいいじゃないか」というご指摘をいただきそうだが、そこはちょっと目をつぶって…。
配線はできるだけシンプルなほうがいい。
USBの口がひとつあるだけでコレが動いた。
会議室に置いておくだけで、誰もがトイレの使用状況を知ることができる。
今回は幸いに、小型サーボモーターに必要な電源はESPr Developerが供給してくれた(厳密に言えば若干電力が足りないが…)。つまり今回はサーボモーターの動力用電源も含めUSBケーブルからすべてもらおうというもの。
ただし、Macの外付けキーボード両側についているUSBの口だと電力が足りなくて、動作が不安定になった、壊れたロボットみたいになってビックリした。
もし不安定になってもUSBケーブルを挿し直せば再起動するので、この写真のようにディスプレイモニターの裏のUSBに挿せば、私が仕事を始めるときに、トイレモニターも仕事を始めるのだ。
さすが、我がパートナー。
次回はシリーズ最終回
できた、コレを見て「シュールだ」と言われる。なんともチープな…。
3回にわたって「デジタルファブリケーションにチャレンジ」シリーズを書いてきた。
私のような、どこにでもいそうなWebデザイナーがPCやスマホ画面の外に対して目を向け始めると失敗続きで痛い目を見ることが多い。
それでも、せっかく関わってきたWeb技術をデザインに活用すると、手にとって触れて何かを得られるという画面の外の体験に気づくかもしれない。
…なんて、えらそうなことを言って今回は終わる。
謝辞
デザイナーがエンジニアの活動を見て、ああ、これはもう分業でもないな…なんて思ったキッカケをつくってくれた村岡 正和さん、興梠 敬典さん、若狹 正生さん、かどっぺさん。
彼らとは2014年に「JS board 勉強会」を行い、またMaker Faire Tokyo 2015にも出展できた。
そしてなにより、弊社にオフィスや会議室、そして今回の主役であるトイレをシェアしてくださっているサービシンクの代表の名村 晋治さん、SNSではつながっていないけどエンジニアの井加田邦和さん、いつもお世話になっています。
ちょっとした発見をするにはいろんな方のキッカケがあるんだなと思う。ありがたい。