業務用ツールのデザインに向けてUIデザイナーができること(その1)
- UIデザイン
- エンタープライズ
こんにちは。思うことシリーズです。
最近、ツクロアでは業務用ツールのデザインを請け負うことも多いです。
わたしは今まで、Webデザイン→アプリデザイン(UIデザイン)を10年ほどやってきました。
いまではWebデザインとはいえ、スマホ対応もあたりまえ。つまり、タッチデバイスで操作するためのデザインをつくることもあたりまえなのです。
タッチデバイスは指で操作するよ
Webサイトは、PCで見てもスマホで見ても、その大きさにあわせて情報量が調整されるべき、というのが今の主流な考え方。
なかには、同じソースコードを使って、見ているブラウザの横幅に応じてレイアウトを変えるレスポンシブデザインという手法もよく使います。
同じような液晶ディスプレイで見るので、単純にレイアウトを変えればよいだろうと思ってしまいがちですが、よくよく考えるとそう単純ではありません。
だって、PCでの操作はマウスもしくはキーボード。スマホは指です。
クリック(もしくはタップ)できる領域は、両者でまったくちがいます。
よく挙がる例では、クリックまたはタップできるボタンの大きさのちがい。
PCではマウスなので、黒い矢印のせいぜい20px四方ぐらいがあればなんとかカーソルを合わせて押すことができますが、スマホでは肉厚な指でタップしますので、7〜9mmが妥当(だいたい48pxぐらい)といわれています。
そういったユースケースをちらっと考えるだけでもPCとスマホのサイトが、ちょっとレイアウトを変えただけでよさそう、とはちょっと思えません。
業務用ツールへの羨望
わたしが業務用ツールのタッチデバイス化に興味をもちはじめたのは、実は3年前。
Developers Summit 2013 というイベントに出させていただいたときの、オーディエンスからの質問でした。
発表内容としては、あくまでアプリのUIデザイナーとして頭のなかでなにを考えているかということを伝えたかったのですが、発表後、想像もしない質問が出ました。
3年経ったいまも、ぜんぜん忘れていないw
「心電図やエコーといった医療機器のタッチデバイス化をやっているのですが、いかに間違えないように操作するためには何に気をつけたらよいでしょうか?」
「物理的なメーターのタッチデバイス化をやっているのですが、国によって色に関する文化がちがうようなのですが、なにか対策はご存知ないでしょうか?」
両質問とも、まったくもってわたしの触れたことのない分野で、すみませんとあやまりながら、逆に先方の事業内容を聞くだけ聞いて、あまりそれらしい答えをしていなかったのが苦い思い出。
当時のスライドはこちらです。
(いま改めてみてみると、デザインとは表面的なデザインではなく、それらをとりまく環境からデザインすることが重要だよ、という内容でした)
でも、この質問がきっかけで、業務用機器のタッチデバイス化という概念を知り、そのために、いろいろな業務で使う機器を眺めては観察・分析するようになりました。
自分がこの機器をタッチデバイス化するとしたら、どんなUIにしよう?と胸をはずませながら。
業務用ツールのUIデザインで考える必要のあること
業務用ツールのUIデザインをするときは、通常のコンシューマー向けのUIとはちがって、次のようなことに特に気をつけなければなりません。
- 長時間操作しても疲れない色
- 誤操作をしない配置
- 慣れを損なわないもの
これらについての詳しい解説は、次回につづく。
わたしたちみたいなUIデザイナーが、業務用アプリのデザインのことを「葬式UI」などといって蔑むことがあります。
葬式UIとは、白・グレー・黒をメインの色として、他の装飾もなく、ただただつくられたUIのことをいっています。
以前はこういった葬式UIのものをみると、なんでもっと見てたのしくなるようなデザインにしないんだろう?とふしぎに思っていましたが、いろいろな業務用アプリを制作している方たちと交流をもちはじめると、なかなかそうもいってられないんだなということがよくわかりました。(無知なくせに恥ずかしげもなくよく言っていた)
UIデザイナーができること
これらをふまえて、わたしたちのようなUIデザイナーが業務用機器のタッチパネル化に際して貢献できることとは。
その業務に関して熟知すること
単にWebデザインやアプリデザインをしているだけではわからないこともたくさん出てきます。
業務用アプリは、基本的にはそれを業務で使う人がいて成り立っています。
しかもそれは、使いづらいからやっぱり使うのやーめよっと。などと言えるものではありません。どれぐらい使いづらくても、どれぐらいカラフルな色が使われていて目が痛くなっても、業務上使わなければならないのです。
そこまで責任があるのです。
その業務においてほんとうにいちばん自然に使いやすくするには。
おそらく、話を聞いているだけではだめで、バイトをする感覚でその業務に少なくとも1ヶ月は就いてみることも場合によっては必要でしょう。
業務用UIの文化をひきつぎながら、新しい風をとりいれる
わたしたちがWebやアプリのデザインで培ってきたノウハウは、存分に活かせるところがあります。
なんなら、いままでとはまったく別の、新しい概念の操作方法を提案することもできます。
しかし、やみくもに新しいものばかりでは、そもそも業務として使いづらくなってしまいます。
どこまで変えてもだいじょうぶなのか、これは依頼主や実際の使用者にヒアリングしながら、考えていくのがいいでしょう。
具体的な内容はまた次回に。