オフショアのWebデザイナーやブリッジSEに思うこと

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ハノイの勉強会の様子

行けば行くほど楽しくなる国、ベトナム。

平均年齢が20代と日本とは逆に若い人が多い国であり、勢いに満ちている雰囲気が個人的には楽しみだと感じている。
以前の記事「ベトナムのオフショア開発企業との協業」にも書いたとおり、弊社は日本国内の開発会社だけでなく、オフショアの開発会社ともコラボレーションしている。
単に価格が安い、というと語弊があるかもしれない。今書いたとおり若さと勢いが入り混じって色々な問題に向き合ってくれる意欲を持っている。
ただ、請負というスタイルがあまりにも当たり前になっているため「言われたとおりやる」ことをゴールとしている人が非常に多いのは個人的にはそろそろ抜け出してほしいと思う気持ちがあり、今回はそういったお話を。

通訳を交えたデザイン勉強会

勉強会後の記念撮影写真

ハノイの中心地にある180人規模の開発会社、Ominext JSCで実際に日本のデザイナーを呼んで勉強会を開催しようという取り組みが行われ、私がお話することになった。海外で講師を行なうのは初めてであったが、終始楽しい雰囲気の座学を行わせていただいた。
といっても、今回はレイアウト方法や配色といったデザイン基礎に加え、日本語特有の表現方法について紹介した。
・ひらがな、カタカナ、漢字の使い所
・縦書き
・ルビ
・日本特有のカギ括弧、丸カッコの使い方
・日本語書体
当然、日本語が理解できる参加者の方は極一部だったのでこれらはとても新鮮だったらしい。
丸カッコ→()は全角と半角があることも。
日本のデザイナーの方なら当然ご存知だろうが、文字組みなどで半角の丸括弧を使う人はいない。
プログラマーの使う半角の丸カッコを使っていた人もいただろう。

日本語に触れていない人に書体の違いを理解するのは難しいだろうけど、「セリフ体」と「サンセリフ体」の大まかな違いは理解できているようだ。
しかし例えば「行書体」と「勘亭流」の違いを理解するのは難しいだろうなと思う。

クライアントオーナーの了承がゴールという価値観

勉強会の後半は全員参加で「文字情報の分類と余白ルール」という流れで、全員の意見をまとめてグループ代表が前に出て発表。
ところが「なぜそうした」という根拠なしに、「私はこのほうがいいと思います」という意見を出すだけにとどまる。
中には私も彼らと同じ意見だったものがあったが、「なんで?」という問いに対して理由や根拠を明確に答えられる人は少なかった。
このままだと自分の好みとして扱われそうだが、こういった文化が定着しているのは自分の意見を出す機会が少ない(もしくは、ない)からではないだろうか?

これは何もオフショアに限ったことではなく、日本の制作会社においても多い。
意見を出す機会の少ない環境においてはその常識に定着し「なぜそうなのか?」という理由を伝える術を持つために自分が訓練されない。
本人が悪いわけではなく「オフショア」という常識にとらわれて気づかないだけなのかもしれない。

座学が終わり、デザインチームと話をする機会をいただいた。
あるデザインを見て、文字が薄く小さい、背景との色のバランスが悪いと分かっていても「これでクライアントのOKが出たんです」ということで良しとしていた。
「オッケー、でもあなたはどう思う?」
と聞くと
「はい、薄いと思います」
と、ちゃんと意見は持っている。

背景色と文字色のコントラスト比に対するガイドラインはJIS規格にもあるし、W3Cも「WCAG 2.0」を勧告とした。
文字の大きさなどにもよるが一般的にコントラスト比は少なくとも4.5:1以上を推奨されている。
ところがそんなことを知らないクライアントオーナーは感覚や好みを入り混ぜてこのような色使いをOKとすることもある。
以下の場合、背景色が#F5FDED、文字が#8CB35F。そのコントラスト比は2.3:1、言ってしまえば「規格外」である。
ましてやこれが医療業界であり、老若男女誰もが対象ユーザーだったりする、関わった人がそこに言及しないのも割と深刻だったりする。

fig

いや、、もちろん論理的に「コントラスト比は4.5:1以上を推奨です」と言うのもいいが、それ以前にアウトプットできる場がないことのほうが問題かなと感じた。

ブリッジSEの課題

ブリッジSEという職業がある。日本語が話せるだけでなく日本の商習慣、IT技術のスキルやプロダクトマネージメント能力も持ち、文字通り日本の発注者とベトナムのスタッフとの橋渡しをする職業である。

これは別のオフショア開発会社にてあった話。
ブリッジSEはとても重要なポジションだが、彼らの多くが「指示を待つ、指示に従う」というスタンスを持っている。
「そもそもそれがオフショアだよ」と言われるかもしれないが「言われたことだけやる」文化は「いい具合」に脱ぎ捨ててほしいのがホンネ。

全ての画面デザインをPSDファイルでもらわないと開発できないのでなれば「今後の仕事をお願いしにくい」という日本の発注者も現実に出てきている。
全てPSDファイルへのコストはカットしたい、そう発注側からは思われてもしかたない。
実際の話、数の多い入力フォームの画面デザインを全部PSDで欲しいと言われたらさすがに困ってしまう。
入力フォームというのはHTMLでいうところのinput, select, textareaといった要素が主でだいたい機能も限られている。
プロジェクトの規模感にもよるし一概に言うのも難しいが、リスクを見据えながらコミュニケーションを取りつつ、自分たちがどこまで判断し、かつ、どこで指示を得るべきか?見極めができるともっと強くなると感じる。
コミュニケーション能力は結構高いし、日本語も上手だし可能性はある。

まだまだオフショア企業でここがアタマ一つ出ている企業はいないのではないか?と思う。
そこが飛び出るとその企業が強い存在になるだろうと思うし、ぜひお付き合いさせていただきたいと思う。

この先の日本

あまり先のことなどわからないし言っても仕方ないが、、2020年を過ぎれば日本のコンテンツ制作業や発注のやり方も変わっていくかもしれない。
高齢化した日本と若い人が多い新興国とのコラボレーションはもっと太くなっていくのかも、と考えてしまう、今以上にオフショアの方にお世話になっているかもしれない。
ベトナムのデザイナーさんは真面目で意欲的、しかし意見に根拠をたてるための基礎を学ぶ機会は少ないように思える。
自分自身で意見を出せるためには根拠が必要で、「なぜそうなった」という文化をつくり出さなければ、ずっと既存の「オフショア」にとどまってしまうのではないだろうか。
これは現地の経営者レベルならすでに意識されているようだが、現場を、組織を変えていくのは大変そうだ。
今自分ができることってなんだろう?と考えたときに、過去に言われたとおりにしかできなかった自分が、そうしなくなったときに得らたものを彼らにも伝えておこうと思う。

おまけ

ハノイ市内、朝の風景

ベトナム語は分からないが、タクシーに一人で乗るようになった。
外国人と見ると改造メーターのスイッチをオンにするドライバー、パカパカとメーターが上がっていくので要注意。
タクシーメーターは「100.」と書いているが、これは10万ベトナムドン(約500円)であり、100万ではない。こっちが知らないと思ったのか「桁が違うだろ!?もっと出せ」と言ってくるようで日本語とベトナム語で大ゲンカ。
もちろん一切出さなかった、まあ、当然だが。。

次はダナンかホーチミンに行ってみたい、いや、行こう。と決めたら行く。

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Akiba Hideki
Akiba Hideki @Hidetaro7
あくまで仕事の中で感じたこと、雑感、正しいかどうかは分からないが、今素直に思うことやチャレンジしたいことを書くためのブログ。デザインと技術について。

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