スペキュラティブデザインと出会う

  • デザイン理論

今月は電子工作シリーズを一休みして、最近知る機会があった「スペキュラティブデザイン」というものを紹介してみようと思います。

今までデザインとは問題解決であると考えていましたが、それだけがデザインではないと教えてくれたのがスペキュラティブデザインです。デザインを新たな視点から考えたものがスペキュラティブデザインです。

キーワードは「現実に即している」「問いを生み出す」です。

いくつかのリンクを貼りながらスペキュラティブデザインについて書いています。初めてスペキュラティブデザインって聞いた人がスペキュラティブデザインについて少しイメージができればいいなと思います。

スペキュラティブって

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日本語訳を検索すると「思索する・推測する」などと出てきます。自分は初めて聞いた単語でした。

スペキュラティブデザインは、私たちに未来について考えさせる(思索)ことでより良い世界にしていこうという考え方です。

問題解決の文脈で語られるデザインは、現在の問題をいかにデザインで解決し人々を幸せにするかを目的としていますが、スペキュラティブデザインは

  1. 未来について人々が考えるきっかけを提供し
  2. 人々を思索させる(スペキュラティブさせる)

ことでよりよい未来にすることを目的としています。

抽象的な話になったので実際の作品を1つ紹介しますね。

音声殺虫機

下のWIREDの記事ではスペキュラティブデザインとして作られた「遺伝子ハッキング銃・音声殺虫機・精密気象調整機」について書かれています。

「未来の農場」を考える、3つのスペキュラティヴ・デザイン wired.jp

「おいおいSFの類?」と思う人もいるかもしれませんね。ただこれらにはSFとは違ったある要素があります。それは「現実に即している」ということです。音声殺虫機は「ある植物は、イモムシが葉を食べる音の振動に反応して防衛反応をしめす」という大学の研究がもとになっており、未来ではその音が出るスピーカを設置して害虫から農作物を守る装置あるのではないかと想定されて作られたものです。

音声殺虫機は現段階では技術的に製造不可能であり、全く問題(害虫問題)を解決していません。デザインは問題解決であるという視点から音声殺虫機を見るとこれはデザインではないということになります。

しかし、スペキュラティブデザイン的にはこれはとてもGoodなデザインということになります

なぜかというとこれは現実に即した「起こりうる未来」を形にして私たちの前に示すことで、そこから考え(思索)議論を呼び起こすことで未来についての倫理観などを形成することに繋がるからです。

スペキュラティブデザインではこの、人にいかに現実味をもって考えてもらえるかを重要視しています。

未来をスペキュラティブする

もう一つ例を挙げてみます。下のリンク先にある人工臓器「Shenu」。これは体から出る水分をすべて人工臓器によって浄化し体にもどして再利用する仕組みの「未来の水筒」です。

takram Dialogue 05:山中俊治 × 田川欣哉 × 緒方壽人 10plus1.jp

この人工臓器がみんなの体に装着された未来の世界はどうなっているのか。

「水不足がなくなりそう」

「サイボーク化に抵抗がある人はどうするんだろう」

「装着できない人ってどうなるんだろう」

人それぞれが考え(問い)を持ちそれを話すことでより深く未来について考えることができます。

また「SF」とは違く「現実に即した」物なので、人はそれをリアルに感じてグッとひきつけられ議論ができる。その議論によって人の考え方が変わり、文化までを変えていく力をスペキュラティブデザインはもっています。

「問いを生み出すデザイン」

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「こんな未来が起きるかも」と手に触れることができるアイテムと一緒に目の前に出されると色々な話のきっかけがうまれてきます。

たとえば上のリンクで紹介した人工臓器「Shenu」

体の中に機械を埋め込む人工臓器なので、ネガティブなイメージ(怖い)からポジティブ(すごいね)なイメージまで様々なリアクションが生まれます。その過程にはそれぞれが人工臓器「Shenu」というアイテムをきっかけとして「未来」に自分がいたらと考えます。

それは未来の世界での倫理観・道徳観について考え、創っていくことに繋がってきます。

人々が未来について考える(スペキュラティブする)きっかけを提供する事がスペキュラティブデザインです。

デザインの使命は「問い」を生み出すこと:Superfluxの「スペキュラティヴ・デザイン」とは wired.jp

まとめ-スペキュラティブデザインとは-

  • デザインは問題解決以外にも役割をもっている
  • それがスペキュラティブデザインとよばれるもの

スペキュラティブデザインは、「ありえる未来」を人に体感させ「その未来を考えさせる」。そしてみんなが未来について考えることでより良い世界にしていくという目的をもっている。

スペキュラティブデザインを知って

デザインをある型に押し込めないで、様々な役割をになっていると捉えるスペキュラティブデザインの考え方は個人的にとても気に入っています。Pokemon Goの登場でVRの世界が日常に突然浸透したように、これからも世界はものすごい勢いで変化していくなかで、自分はより多くの視点から物事を捉えるスタンスを保っていきたいなと考えています。

もっと知りたい人へ

スペキュラティブデザインをもっと深く知りたいと人へ下の本を紹介します。たくさんの事例とともに筆者の考える「スペキュラティブデザイン」について書いてあります。

スペキュラティヴ・デザイン 問題解決から、問題提起へ。—未来を思索するためにデザインができること

参考にしたサイト

takram Dialogue 05:山中俊治 × 田川欣哉 × 緒方壽人 http://10plus1.jp/

問題はあえて解決しない、2016年重要ワード「スペキュラティヴ・デザイン」とは ascii.jp

 

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Takahashi Tomonari
Takahashi Tomonari @TravelTravelerr
世界一周の旅から帰ってきました!「デザインと関係ある?」と突っ込まれそうな記事が多いです。

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