あらためて振り返る自分のスキルアップについて

  • スキル

先日、「ハード・ソフト・ネット、そしてMake、 素朴なWebデザイナーの向き合うこれから」というタイトルで、HTML5 CONFERENCE 2016に講演させてもらった。

HTML5 CONFERENCE 2016登壇時の写真

発表資料はこちら。

公演後、ある参加された方からの質問に個人的なアドバイスさせてもらったら、後日メールにて「早速他のスタッフにもシェアしました」という返事が帰ってきて、「ああ、この方のシェア行動ってのがいいな」と思って「ラーニングピラミッド」という学習効率を上げる有名な方法のことを思い出した。

ラーニングピラミッドの図
ラーニングピラミッド

この図でしめすとおり、ただセミナーを受けて聞くだけでは「なんとなく分かった気になっているだけ」なのかもしれないが、後からそれを「アウトプット」する行動を取ることで「自分のスキル」に定着しやすくなるというもの。

個人的に思うことは、そもそも「教える」機会が必ずあるわけでもないので、後で疑問に思うことは講師に話を伺うことや、手を動かすことなどを、とにかくそのままにしないことが大切だ。

こういったセミナーというのはある種楽しみの場や交流の場ではあると考える人もいるが、忙しい中時間やお金を使って参加するということはやはり何かを得て帰りたい。

ただ聞いて楽しんで、というのも悪くはないかもしれないが、私自身、それだけだったらもう足を運ばなくなってしまった。

先ほどのシェアされた参加者の方は人に教えただけの行動かもしれないが、他者に教えることで自分にも責任を感じるのでもうひとつ踏み込んで復習する。その繰り返しがスキルにつながるのではないかと思う。

スキルアップする人はインプットとアウトプットのバランスが優れている人ということではないか?

スキルアップに直接利益を求めるべきではない

これをやっておけば就職に有利だとか、今からはプログラミングスキルが必要だからとか、特に絵を描くだけを特技とするデザイナーが自分の新しいスキルを身につけようと考えるときに「自分はデザインしかできないから」を理由にプログラミング学習に手を出す人がいるが、ちょっと安直な気がする、デザインはそんな狭いものではない。
ただその反面、多方面のスキルを身に着けやすい時代でもある気もする、どちらが良い悪いというわけではない。

あるデザイン学科の学生さんが「就職に有利」にこだわっているようで、それって「仕事に就ければなんでも良い」という気持ちの裏返しにも思えるが、今の時代、はたしてそんな人が求められるのだろうか?と疑問ではある。

私自身、仕事のための勉強するとき、一切「就職に役立つ」とか「仕事になるかも」という目的だけで学習できたことは一度もなく、むしろそういう考え方が邪魔でしょうがない。そういう考え方で勉強しようとするとつまらないどころか、幼少から勉強が嫌いな自分としてはもう苦痛でしかない。

おそらく優秀なスキルを持った方は「理由なく楽しいから」だけで今に至る人が多いのではないか?とずっと思っている。

「好きなことだけしかやらない」というとキレイ事のように思われるかもしれないが、そろそろ、それくらい目標を高く持ったほうが仕事のクオリティを高めることにつながるんじゃないだろうか?

スキルで勝負しても損すること

単に就職に強いとか、なんでもいいからスキルは持っておいたほうがいいとか、そういう考えに支配されるとあまり良いことがなかったように思える。

コンテンツも大量生産・大量消費の時代が終わって、一つ一つのプロジェクトで価値を求められる時代になった。

90年代はある意味よかった、コンテンツは何をつくっても最先端。今は何をつくるにも競合、いや、パクリにならないか?なんて「え?そこから?」というある意味厳しい時代。

技術スキルだけをアイデンティティとして勝負するようになると、盲目的になりがちなのが「言われたとおりやればOK」のような意識が染み付いてしまいがちだった。過去を考えると損してきたな、と思えている。

以前このデザインラボでも書いたとおり、ベトナムなどオフショア開発のもっぱらの課題は対日本コミュニケーションスキルとクオリティの強化だ。彼らは日本の高価な案件を取るために日々コミュニケーションクオリティの向上に努力している。

単価の高い日本に住みながらオフショアと同じようなスキルだけで勝負しても、食べてはいけてもそれ以上を望むのは厳しい気がする。

自分に向かないことも認める

スキルが伸び続ける理由は、その人がこの先にどういう仕事をイメージしているかができているからではないだろうか?

イメージができると自分に向かないスキルをも認めることができる。

例えばコンピュータグラフィックスのスキルを学習中の自分がいたとして、手付けのアニメーションが楽しくて下手でもイメージが湧くから作業が進むが、逆に数学での座標計算は何度チャレンジしても苦手だと理解する。そしてそこは認め、得意な人に任せようとする、そうすればWebGLの本1冊を「すべて理解しなければならない恐怖」なんて感じずに、自分の得意とする範囲を認めて不得意も同時に認められることをイメージによって理解できる、と考えている。(今の自分がそんな感じ)

もちろん本1冊理解できたらそれは嬉しいことだ。でもすべてを習得できなくても将来何がしたいかとか何ができそうでワクワクするかという仕事のイメージができていることのほうが自分にとっては向いている、と思えばそれはそれでいいと思う。そして何が自分に向いていないかを知ることで、誰かのチカラを大切に思うようになる。

大量生産より大事なことを求める声も

デザイナーならPhotoshopやIllustrator、最近ではAdobe XDといったデザインツールも出てくると思えばSketchのようなツールも人気があるしお世話になっている。

一般的な求人欄に載っている必要なスキルはそんなツールを使えることが必須といったところだが、どこの職場でも最終的にそれだけで評価、つまり給料が上がることはそうそうないだろう。

過去にお付き合いのあったデザイン事務所に一日に3つも4つもWebサイトのデザインカンプを仕上げるデザイナーさんがいて、その生産性とテクニックに周りのスタッフは高評価だった。

でもそれも何年も前の過去の話、今はデザイナーも静止画デザインの大量生産より、価値探索や問題解決に深く向き合いながらもアプリケーションを使いこなす複合的なスキルが重要視されるのはコンテンツがあふれる今の時代は至極当然な気がする。

もちろんご本人の努力や向上心には敬服に値する、しかしデザイン系のアプリケーションは日々進化して、誰でも使いやすくなっている。

ご存知のデザイナーの方も多いと思うが、2014年、Adobe Illustrator CCがアンカーポイントツールの仕様を変更(正確には機能追加と思うが)アンカーポイントツールというベジェ曲線の機能を追加してきた。

これによって、今までベジェ曲線を書くために必要だったペンツールのスキルは、それほど重要ではなくなったことをAdobeさんのイベントに登壇したときに話した。くわしくはCSS Niteを運営されている鷹野雅弘さんがこちらの記事で紹介してくださっている。

ゆとり世代のベジェ(ゆとりベジェ) – DTP Transit : http://www.dtp-transit.jp/adobe/illustrator/post_1967.html

つまりアプリケーションというのは、スキルを持たない人でも問題解決ができる道具であることが、本来あるべき姿ではないか?私はそう思う。

スキルは一つのほうがいいのか?幅広いほうがいいのか?

なんでも手を広げるよりも、何か一つ強いスキルを持ったほうがいいと言う人が多い気がする。

確かに「この人はここが強い」と周囲から認められやすくなるためには、一つ強みを強烈に放っている人がいいのかもしれないし、分かりやすい。

ところが、私はそういうタイプの人とは全く逆な気がする、が、なんとなくそれでいいと思っている。

なぜならこれからWebとかテクノロジーって、ハードやソフト、デザインやエンジニアリングなどの境界をある部分で取り払って「何かができる」世の中になっていく気がするから、特段これが強い、じゃなくても良い世の中になる気がしている。

Web Bluetooth、Web Audio Data、Web RTC、WebGL…すべてを理解できなくても一通りベーシックな部分を触ってみた。

3Dプリンタでモノづくりもして、Arduinoを仕込むことも実際手を動かしてやってみた。高速プロトタイプが可能な時代だってこともわかる。

デザインやアートだったり音楽や映像だったり、あるいはモノやセンサーを紐付ける技術がだれでも持ちえるWebブラウザで実現できるとなれば、あとはその先にどんなコンテンツを提供できるかが自分の課題であり役割であると思っている。

まとめ:イメージし続けること

うーん、まとめられない。スキルの話をするととりとめのない結論に終わる、何が正しいかなんて分からない。

ただ、漠然でもいいから自分のビジョンを語れる人は魅力的に見える時が多い。でも無理に語る必要もない気がする、この先分からないことだらけなので。

この先の仕事のイメージを持ち続けることでスキルは身につきやすい、ということはなんとなく正解に近いかなと感じ続けている。

ではまた次回。

そんななか、弊社ツクロアで執筆した「Webデザイン・コミュニケーションの教科書」が台湾版となって発表されました。
http://www.taaze.tw/sing.html?pid=11100789267

ツクロアではデザイナーとコーダーさんを募集中です。
スキルに依存しないとか言いつつも、最低限のアプリケーションスキルは必要だと考えています。

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Akiba Hideki
Akiba Hideki @Hidetaro7
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